かつおぶし初段

かつおぶしがアツイ。ときどき醗酵とか。

かつおぶしって醗酵食品だって知ってた?

特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE
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にぎやかな天地(上) (講談社文庫)


にぎやかな天地(上) (講談社文庫)

この小説との出会いが、かつおぶしとの出会いでした。

かつおぶしって醗酵食品だって知ってた?

何人に言ったかしれないほど、本書を通して知り得たかつおぶしのカビ付けについて熱く語り、醗酵という目に見えない微生物たちの働きに想いを馳せました。

本書は、醗酵食品の本を作る仕事を引き受けた編集者の主人公が、取材という形でかつおぶしや熟れ寿司作りの工程を学び、醗酵の世界に触れ、また、亡くなった祖母の秘密にまつわるストーリーを絡めながら、祖母の糠漬けを再現しようとしていきます。

宮本輝作品ですから、生と死と、絶望からの再生という、生きる力を描いた作品でもあるのですが、今回は人間より微生物。
単細胞の微生物がものすごい数集まって、時間をかけて成し遂げる偉業、奇跡が醗酵なんです。

糠床には何兆何億という微生物が生きていて、鮭の頭さえもほんのわずかな日数で分解されてしまうというエピソードひとつとっても衝撃度は高く、醗酵の奥深い世界のほんの入り口としてもインパクトは十分でした。

正直ストーリーよりも醗酵に興味が湧いたもんで、もっと詳しく知りたい、なんならこの主人公が作った本が読みたいのに、と読み終わってからも興奮覚めらやぬ日が続きました。

かつおぶしは、製造過程、歴史、産地、利用方法のいずれにおいても、知れば知るほど、奥深い世界です。かつおぶしについて調べ始めたら、まだ、ほんの入り口から覗き見しているだけなので、ちょっと一言では語れなくなってしまいました。

醗酵の世界、そしてかつおぶしへと導いてくれた本書が私にとっては、新しい人生が開けた青春の一冊です。